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備忘録

勉強や読書の記録

佐藤優『知性とは何か』,祥伝社,2015

書評 ビジネス

 手元にある佐藤優氏の著書をいくつか読んでいる.そのうちの一つが『知性とは何か』である.本書では反知性主義に焦点を当てている.

知性とは何か(祥伝社新書)

知性とは何か(祥伝社新書)

 

 

 パワー・エリートに広まっている反知性主義は「客観性や実証性を軽視もしくは無視し,自分が欲するように世界を理解する態度」と本書では定義されている.では反知性主義に陥らないためにはどうすればいいのだろうか.そのための処方箋を3つ挙げている.

  1. 自らが置かれた社会的状況を,できる限り客観的にとらえ,それを言語化すること.自分の考えをノート,PC,スマートフォンなどに記録する習慣を身につける.
  2. 他人の気持ちになって考える訓練をする.
  3. LINE等のSNSを用いた「話し言葉」的思考ではなく,頭の中で自分の考えた事柄を吟味してから発信する「書き言葉」的思考を身につけること.重要な事柄については,SNSを用いずに,PCで文を綴り,プリントアウトして,推敲した後で送付する習慣を身につけると「書き言葉」的思考力が向上する.

 反知性主義に対抗するための知性として,言葉と存在論/現象論を挙げている.言葉については,先ほど挙げた「書き言葉」に加え,外国語の習得を勧めている.これには私も同意する.なぜなら,日本のメディアは流通させる国外の情報を恣意的に選んでいるだけでなく,誤訳も少なくない.もし仮に原典に直接アクセスできるだけの語学力があるのならば,選択の基準に騙されることがなくなる.存在論/現象論に関しては,事実(現象)だけでなく,その裏にある何か(存在)を見出すことが必要だという.それに有効なのが以前紹介した超したたか勉強術で挙げられているアナロジーや敷衍等だ.読んでこうした構造を発見することも大切だが,やはり自分で使わなければ自分の肉として意識できない.

 筆者は本書を次の言葉で締めている.

教科書に書いている内容を覚え,それを一時間半から二時間の限られた時間で再現することができる偏差値秀才は,学力は高いかもしれない.しかし,それが人生や仕事に役立つ知性と直結するわけではない.知性は,記憶力や再現力だけでなく,人間の生全体を貫く営みだからである.

知識を積み上げることも必要だが,知性に繋げなければ意味がないという主張には同意する.そのためには常日頃良質な文書に触れ,自身の語彙と知識を更新続けなければならない.