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備忘録

勉強や読書の記録

冨澤暉『平和を支える力の論理 逆説の軍事論』,バジリコ,2015

 この先忙しくなるばかりで何時まで経っても投稿できる未来が見えないので,諦めて簡単に書くことにし,ようやく追いついた…

 本書は元陸上自衛隊幕僚長の著者が語る軍事学入門書である.非常に平易かつ明瞭に書かれており,著者の思考の鋭さを窺える.

逆説の軍事論

逆説の軍事論

 

 軍事の歴史から各国の動向,そして日本の軍事へとシフトしていくが,特に印象に残っているのが,第12章の「リーダーシップとフォロワーシップ」の部分である.

結局のところ,統率力とは各級の指揮官となる者が自ら学び考え,自ら修練して身に付けていくものだというしかありません. 

著者は,指揮官には「能力」で率いる人と「人格」で率いる人がおり,どちらも満点がベストだが片方でも満点を取れる人はほぼいないので,常日頃の鍛錬が重要だと言う.私と全く同じ考えだ.

 筆者は,

「能力」を向上させるには,もちろん自らの体験を増やし,そこで得たものを蓄積していくということが必要です.しかし,個人の体験と言う者は極めて限定されたものなので,他人の体験を借りてこなければなりません.これが「学ぶ」ということです.そして孔子が「学びて思わざれば,すなわち暗し」と言っているように「いかに学んでも自分で考えなければ前が見えず前進できない」ということになります.「思う・考える」ということは自分や他人の体験例をただ羅列するのではなく,その体験・知識に筋を通し傾向や論理を自ら作り上げ,変転する状況の先を合理的に正しく洞察するということのようです.むろん,ここでは他人の作った論理をも学んで利用します.それらの繰り返しの努力によって人の能力が向上するのです.

「学ぶことと考えることのどちらを優先すべきか」という問題は難しいのですが,私は,成人には「考えることを優先するよう」進めています.なぜなら成人は否応なくすでに相当学んでいるはずなので,今こそ「考えるべき時」だと思うからです.私自身の体験からすると,考えればおのずと学びたくなるものです.けれども,学べば考えたくなるとは必ずしも言えません. まずは「考える」ことなのです.

一方,「人格」を陶冶するにはどうしたらよいのでしょうか.ここでいう「人格」とは「他人と折り合っていく力」あるいは「他人を惹きつけ共に行動しようと思わせる力」とでもいうことができるでしょうか.一見やさしそうですが,この力を向上させることはとても難しいことのようです.それを得るための方法はおそらくいくつかあるのでしょうが,私は若い学生たちに「なんとなく嫌いな人,付き合いたくない人を避けずに,彼らと積極的に付き合いなさい」と勧めています.「社会人になれば,そういう人たちばかりに取り囲まれるのですよ.そのすべてを避けていたら貴君は生きていけなくなるのですよ」とも言います.「そういう人たちと無理してでも真剣に付き合っているうちに,その相手の悪いところも,意外に良いところもわかってくるし,それ以上に貴君自身のいいところも意外に悪いところもわかってくるでしょう.そこで相手のいいところを取り,自分の悪いところを抑えて付き合う,そうした付き合いを続けていけば好き嫌いの感情もまた変わってくるのです」と話しています.

示唆に富む…というか大変ありがたいことではあるが,私が全力で殴られている…

 更に,孔子の『論語』から「自身の心に誠実に」と「相手にも信念があるのだから認めてやれ」というエピソードを引いて,「自分には厳しく,他人には優しく.」と説くのは簡単だが,現実には「自分に厳しいが他人にも厳しい」,「自分にも他人にも優しい」,「自分には優しいが他人には厳しい」といった3タイプがほとんどであり,いずれも「人格者」ではなく指揮官・統率者になれないのはもちろんだが「良き服従者」にもなれないと言っている.

 私は「自分に厳しいが他人にも厳しい」タイプなので気をつけねば…良心の押しつけが良くないのには同意するが,「基本的に好きにすればいいが結果は自分で何とかしろ」と思っているので,もう少し優しさを身につける必要性を感じる…

 そして最後にこのようにまとめている.

  1. 「統率」はあくまで個人個人のもの.
  2. 「統率」はその時々の環境により変わる.
  3. 「統率」は昔の例を真似てもできない.
  4. 「統率」に百点満点は有り得ない.
  5. 「統率力(リーダーシップ)」の錬成は困難だが諦めてはいけない.常に「能力」「人格」の向上に努めなければならない.
  6. 「統率」を支えるフォロワーシップのためには,組織の構成員(社員・国民一般)に対する精神教育(最も基礎的な普遍的良心の教育)が大変重要だが,これを個人に対する良心の押しつけととられないように注意する必要がある.

 「人格」はそういった本を多く読んできたので大分ましになったが,「能力」は不十分なので,もっと磨いていかねば…(とは言え適切な環境で学ぶほうがトータルで割く時間が圧倒的に違うので今はその時期ではないと思ってスルーしている).