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備忘録

勉強や読書の記録

アトゥール・ガワンデ『死すべき定め―死にゆく人に何ができるか』,みすず書房,2016

書評 医療

 本書は外科医であるアトゥール・ガワンデが,避けられない死にどう向き合うべきかとテーマで書いた論考である.科学や医療の進歩により我々の寿命は飛躍的に長くなった.結果として高齢化社会が進んでいる今,読んでおいて損はない一冊である. 

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

 

 

 全ての人はいつか死ぬ.老いと病に向き合う上で,恐れか望みか,どちらが自分にとって最も大事なのかを決めなければならない.奇遇にも,本書で提示される視点と私の視点は一致している.死を予感してからの時間の過ごし方は非常に重要である.多くの場合は,例えば癌であれば完治しないのは自明でありながらも化学療法の適用といったように,延命処置を行う.しかし,果たしてそれは患者にとって幸せなのだろうか?苦しみを長引かせ,病院で磔にされ自由はほぼない.残された貴重な時間をそのように使うのは,患者にとって本当に幸せなのだろうか?

 少なくとも私はそうは思わない.私の父は非常に高齢で,食事量の割にアルコール摂取量が異常に多いので,そう遠くない内に死んでしまうと思っているのだが,本人の楽しみが酒なので,止めることもないかと考えて特に何も言ったりはしない.息子としては長生きしてほしいので「そんなに飲まなくても…」とは思うが,他人の考えるその人の幸せと,当人の考える自分の幸せは一致するとは限らないので,可能な限り本人の意思を尊重したい.

 医師は患者の意思を尊重するためにも,情報提供的な態度(冷酷な現実とその説明の提供)ではなく,相手が聞きたいことは何かを問い,相手に伝え,相手がどう理解したかを問う,「問い,伝え,問う」スタイルを提案している.患者に限らず他の状況でも役に立ちそうなメソッドだと思う.

 少し話は逸れたが,本人の意志の尊重,つまり,本人の自由を守るためにも,親ともそういう話をしておかないとなあ…とは思うものの,生きてる親と向き合って死んだ時の話をする気にもなれない…難しい…