野矢茂樹『入門!論理学』,中公新書,2006
立花氏・佐藤氏の共著『ぼくらの頭脳の鍛え方』で紹介されていた一冊.その名の通り,論理学のバックグラウンドの全くない人のために,記号を用いずに,公理系の導入から(論理学における)演繹的推論までを扱っている.本書の良さは,本書を通して,何もないところから論理学を組み立てていくプロセスが記述されている部分にある.このような内容が書かれた本は少ないので(単に出会っていないだけかもしれないが),一読の価値はあると思う.
記号を使わない代わりに,どうしても記述が長くなってしまうので少し読みづらい部分はある.が,246ページしかないのによくまとまっている.もし実践的なものを求めているのであれば,氏の著書『論理トレーニング101題』を推奨する.
- 作者: 野矢茂樹
- 出版社/メーカー: 産業図書
- 発売日: 2001/05/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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知識面では特に新しいものはなかったが,印象に残っている部分がある.
実は, 論理学を学んだからといってただちに論理的になれるというわけではないのですが,論理学の教科書というのはとても論理的に書かれていますから,それを読んでちゃんと理解するというのが,すごく論理のトレーニングになるんですね.いまの解説などを読んで,自分がどう間違えていたのかをきちんと理解する.それが―そこで得た知識がというよりも,その解説を理解するために使った頭の働かせ方が―,あなたの論理力を鍛えてくれるというわけです.頑張ってください.
本書では「論理」を「言葉と言葉の意味的ネットワーク」と表現しており,まさにその通り.この辺いけるなーと思うと読み飛ばすと大事な部分を見落としたりして,後で困ることが少なくない身としては,気をつけねば.