備忘録

勉強や読書の記録

リチャード・ヴィートー『ハーバードの「世界を動かす授業」 ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方』,徳間書店 ,2010

 GW中に何冊か読もうと図書館から借りた一冊が,「ハーバードの『世界を動かす授業』 ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方」である.しかし,私の経済学の知識が皆無のため,思っていた以上に時間がかかってしまった.本書は各国が置かれた状況に対して手持ちのカードを用いてどのように対応したかという視点で簡潔に経済史を振り返っている. 

ハーバードの「世界を動かす授業」 ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方

ハーバードの「世界を動かす授業」 ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方

 

 イントロダクションでは周囲の環境や手持ちのカード等の状況に合わせて戦略を練ることが大切だと述べている.最後には読み方として前から順に読んでもよいし,第8章を読んでから第1章を読むのも良いと書かれている.個人的にはイントロダクション,第7章,第8章を読めば十分だと考える.第1章~第6章は経済史の勉強にはなるのかも知れないが,経済学に対して全く知識のない読者が内容を読み取るのは少々難しいと思う.己の無学ゆえに内容を十二分に吸収できなかったのは残念だが,本書を読むことで自分が如何に世の中を知らないかを知ることができたことだけでも収穫があったと思うしかない.

 本書で紹介されているケーススタディの対象は国家に限定されているが,書かれていることは企業だけでなく個人にも言えるだろう.特に印象に残っている記述を引用する.

戦略を練る上で忘れてはならない点がある.たくさんの優秀な人たちでさえ,戦略をまとめるときに―国家の戦略に限らず,企業の戦略でも―見落としてしまう大切な点だ.それは,戦略はその国に合うものを作るということである.せっかく立派な戦略を作っても,その国が実行できない戦略では意味がない.戦略の実行が難しいとか簡単であるとかいう問題ではなく,その戦略がその国民の特質やスキル,資源の有無,政治文化に合っているのか?また,国際的に立たされている状況や,地理的特質に合っているのか?言い換えれば,その国を構成するさまざまな状況に戦略がマッチしているかどうかということだ.日本が成功した戦略だから,同じ戦略を別の国でやれば簡単に成功するということではなく,それぞれの国に合った戦略を立てることに国家の命運がかかっている. 

当然のことのように思えるのだが,わざわざ書かれているということは,当然のことが実際にはできていないということなのだろう.このような戦略を立てるためには,状況を読み解く力,実現可能な戦略を練る力が必要だ.手持ちのカードが充実しているほど戦略の幅も広がるので,手持ちのカードを補充・強化することも必要だ.

 今,私が持っているリソースは少々の収入と,資本の中でも最も貴い「時間」である.幸いにもまだ23歳なので,使い道はいくらでもある.本書では,日本市場はクローズドであるのに対し,海外市場に参加している国家は確実に競争力を高めていると書かれている.10年後には海外資本が日本市場を席捲しているかもしれない.この先生き残るためにも,限られたリソースの投資先は熟慮しなければならない.