備忘録

勉強や読書の記録

佐藤優『超したたか勉強術』,朝日新書,2015

佐藤優氏の著書を立て続けに読んだ.今回は『超したたか勉強術』を紹介する.本書の目的は,現在を生き残るための思考の鋳型を提示することだ.現在の問題と歴史との類比を用いる等,方法の提示と同時に具体例を示しており,非常にわかりやすい.

超したたか勉強術 (朝日新書)

超したたか勉強術 (朝日新書)

 

 

しかし,実際に自分の思考を深くするためには対象に対する切り口を自分なりに検討する必要があり,結局それは自身の教養に依存するので,本書で述べられる方法を実現するにもまずは知識を身につける必要がある.この点には著者も同意しているが,一方で,使えないほどの量の知識を収集するのはインテリジェンスとしては無意味だとも警告している.これの対応策としては,dropbox等にプッシュする前に,一度自分でその情報を咀嚼することが有効だという.また,自身の脳内にストックできる情報量を増やすために,読書に加え,丸暗記も勧めている.私は丸暗記自体に意味を感じないためこれまで何かを暗記することはなかったのだが,著者は記憶容量アップのための暗記なので,いわゆる試験勉強等とはまるで性格が異なるという.恥ずかしながら私は記憶力が悪く,それが一つのコンプレックスであったりもするので,座右の書でも丸暗記してみようと思う.

 

本書では至るところで思考のポイントを提示している.備忘録として,簡単に書き留めておく.

1.  アナロジーで考える

 似通った構造を持つ複数の事柄を比較して考えることで,新しい知見を得たり,仮説を立てたりすることができる.

 

2.  敷衍して論を発展させる

 同じ事柄を別の言葉や例で表現すること.一つのテーマに対して別の概念を用いて思考を展開することで,キー概念へと思考を広げることができる.

 

3.  正反対の人物をイメージする

 一つの物事を自分の考えや立場と対極にある人になったつもりで捉えてみる.その人ならばどう考えるかを創造し,次の段階で,想像したことを論理的に組み立てる.

 

4.  共通点と相違点を探す

 共通点,相違点と順序立てて考えることで,思考の方向性が見えてくる.

 

5.  歴史的事実を使って規定する

 「動かし難い歴史的事実」を使って規定し,その規定に照らし合わせることで,重要な論点が見えてくる.

 

6.  情念面からもアプローチする

 ある人物が頑なに主張することに論理整合性を見出せない場合は,その主張が当該人物の内面の問題に起因していることがしばしばある.その場合は生育史なども含めた情念面からのアプローチをとってみると,意外な発見がある. 

 

7.  アイデンティティ―に注目する

 複雑な問題は,類比可能である程度評価が固まっている歴史的事実や,事態が落ち着いている近過去と比較すると良い.複雑な問題をいくつかの要素に分け,自分で構成要素を組み直す作業を繰り返すと,考えが整理されて問題が見えてくる.社会的問題に対しては,著者はアイデンティティーに注目するのが有効だと考える.

 

8.  第三者の立場から考える

 当事者同士よりも離れた距離感で物事を考えられる.つまり,適切な切り口を用意すれば,余計なノイズに影響されることなく思考できる.

 

9.  別の概念に当てはめる

 長らく考えてきた問題を別の概念に当てはめて捉え直すと,その問題が持つ別の側面に気付くことができる.

 

10. 更なる謎に迫る

 

11. 他人事と捉えない

 自分に直接関係ないようなことでも,類比を用いて自分と関連付けてみる.

 

12. 他の選択肢の可能性を探る

 多くの人が最良だと考えている価値をあえて疑ってみる.

 

13. 価値を相対化する

 ここからは,最良だと考えている価値も,任意に分節化できることがわかる.個人の思想信条,信仰といった内面的な価値を別にすれば,絶対的な価値は存在しないという前提で,物事を考えるべき.

 

14. 立ち位置に目を配る

 

15. 感情的な要素を排除する

 物事を理性で認識する際に守るべきルールを決める.本書で用いている教科書では「立場の異なる人とも議論可能な論理に基づいて物事を考える」,つまり,感情的な要素を排除することをルールとしている.

 

16. ルールの数は絞る

 考察のルールは少ないほうがいい.ルールの数を多くすると,物事を判定する物差しが多くなり,複雑な物事を整理する際に手間がかかる.あるいはいくつかの物差しを組み合わせるなど,整理の段階で作業が複雑化する.人間の集中力には限度がある.ルールの数を絞り,整理の手間を省力化して,抽出した要素をじっくり考えることに集中したほうが,得られる成果は大きい.

 

17. 効果的に敷衍を行う

 論理的で合理的であっても,実証性と客観性のないものに説得力はない.他社に理解しづらいことを説明するのに敷衍は効果的な手段だ.

 

18. 双方の立場から立論する

 

19. 裏返して考える習慣をつける

 物事の本質はしばしば裏に隠れているものだから,裏返して考える習慣をつける.